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書評 「脳には妙なクセがある」

 




池谷裕二の本は、たくさん読んでいます

「進化しすぎた脳」 「受験脳の作り方」 「脳はなにかと言い訳する」 「単純な脳、複雑な「私」」 「記憶力を強くする」 「海馬」 「のうだま」 「のうだま2」 「ゆらぐ脳」 「和解する脳」 「脳はこんなに悩ましい」 などを読了済みです。その中で、どれか1作をお勧めしろと言われれば、本書をお勧めしたいです。では、書評を書きます。

人差し指と薬指の長さの差で、胎生期(たいせいき)に浴びたテストステロン(男性ホルモンの
一つ)の量がわかります。薬指の方が長ければ、テストステロンが強いですテストステロンが強いと、自信に満ちたタイプになり、危険を好み、粘り強く調査し、注意深くなり、反応や動作が早
くなる傾向があります

そうした人は、数学が得意なタイプが多く、またサッカーやラグビー、バスケットボール、スキーといったスポーツ競技においてもよい成績を残すことが知られています。デイ・トレーダーたちも似たようなものです。

株取引の現場はさまざまな情報が高速に飛び交う戦場です。単に正確な数値計算ができればよいというわけではなく、瞬発力や注意力など、体育会系の競技に似た要素も要求されます。人差し指の短い人は、発達期にテストステロンのシャワーをより浴びているから、結果として、投資家に向いています

ちなみに、男性のほうが一般的に人差し指は短いです。男性ホルモンだから、当然ですが、女性のなかにも、人差し指が短い人がたまにおり、そういう人は同性愛の傾向が強いですテストステロンは反社会性を高め、攻撃性を高めるという従来の説がありましたが、覆される実験データが出ました。

実際には、攻撃性を必ずしも高めるわけではないのです。しかし、「テストステロンは男らしくする」という思い込みでも、攻撃性は高まります。プラセボ(偽薬)効果が現れました。本当は、テストステロンを注射されてないのに、注射されたという嘘を教えらえた人の攻撃性が高まったのです

恋人同士でなく、母子の関係についても、面白い事実が分かっています。なんと、母親が若い頃によい経験をすると、そのよい影響が子どもに遺伝するらしいのです。そもそも「遺伝」とは遺伝
子が媒介するものであって、たとえば、親が個人的に経験したことは子孫に遺伝しないと考え
るのが常識です
。この常識を覆す実験データが報告されました。あくまでネズミの実験ですが、人にも関係があるかもしれません。染色体やDNAへの後天的な化学修飾は、精子ではリセットされるのですが、卵子では子孫に引き継がれます

女性は将来に授かる子どものために、よい環境に恵まれることも視野に入れながら若い頃の生活を送ることは、念のためにはよいかもしれないです。子どもを産まなくても、よい環境が本人にとってよい影響があるのは明らかなのですから。

ボトックスは、肌の老化を防ぐとされる魔法の物質です。実際には、ボトックス食中毒の原因として知られるボツリヌス菌の毒素です。この食中毒は、症状が軽微な場合は四肢の麻痺で済みますが、ひどい場合には呼吸ができず死に至ります。つまり、ボトックス筋肉を弛緩させる作用があります。この毒素を顔に注射すると、顔面筋の動きが鈍くなりますだからシワができにくくります。

表情が多少乏しくなるという欠点はありますが、美貌の劣化を恐れる富裕層や芸能人に人気があります。しかし、ボトックスを使用すると、相手の表情を読みにくくなります相手の表情に共感して、真似をすることで、相手の感情を解釈するのですが、ボトックスによって表情が乏しくなると、相手と同じ表情をしづらくなります。だから、相手の感情を読み取りづらくなるらしいです。

赤色は士気を奪いますオリンピックのボクシングで、赤サイドの方が青サイドよりも10~20%
ほど勝率が高いデータがあります
。オリンピックでは赤と青の選手はランダムに割り当てられるし、入場も同時。にもかかわらず、差があります。赤色を見るのは、青色の側です赤色を見ると士気が下がり、青色側が負けるのではないか?と推測されています

柔道にも実は似たような事例があります。白胴着と青胴着では勝率が異なり、青色を着た選手のほうが勝つ確率が高いです。さらに、パソコンのモニタ枠を赤色にすると仕事の能率が低下するというデータもあります

解析結果によれば、人生に幸せを感じる度合いはU字曲線を描くことが判明しています。つまり、20歳以前まで高かった幸福感は、20代で一気に落ち込み、40代から50代前半頃までが最低迷期となります。そして、これを過ぎると回復を始め、調査された範囲では最高齢である85歳に向けて徐々に上昇するのです人生のピークは老年期でした。

この傾向は、子どもや配偶者の存在などの生活環境因子によってほぼ影響を受けないため、ほぼ普遍的な経年変化であると言えます。ただし、気をつけなくてはいけないのが「老人性うつ」です。全般的な傾向として、年齢とともに心は平穏になりますが、盲点が、高齢者のうつ病ですうつ病は老人に多いのです

自由意思とは本人の錯覚にすぎず、実際の行動の大部分は環境や刺激によって、あるいは
普段の習慣によって決まっています
。ここまで読んで、「まさか自由がないはずがない。でたらめ
なことを言わないでほしい」「自分の決定が単なる反射なんて信じられない」
と憤慨や不快感
を抱いた方もいるかもしれません。でも、申し上げたいのです。その感情すらも、そう思ってしまった以上、もはや一種の「反射」でしかない、と。なぜなら、他の感情をいだくという自由があったはずなのですから。

著者の意見に対して肯定的な感情を持つという選択ができたにもかかわらず、そうは思えなか
った。やはり、これはその人の「思考癖」や「環境因子」が決めたものなのです。にもかかわらず
私たちは「自分で判断した」「自分で解釈した」と自信満々に勘違いしてしまいます。

「どうせ無意識の自分では考えが決まっているんでしょ」と考えれば気が楽になります。そう、そもそも私たちは、立派な自由など備わってはいません脳という自動判定装置に任せておけばよいのだから、気楽なものです。もちろん、自動判定装置が正しい反射をしてくれるか否かは、本人が過去にどれほどよい経験をしてきているかに依存します

ですから、著者は「よく生きる」ことは「よい経験をする」ことだと考えています。すると「よい癖」が出てきます。「頭のよさ」を著者は「反射が的確であること」と解釈しています。その場その場に応じて適切な行動ができることです。適切な行動は、その場の環境と、過去の経験とが融合されて形成される「反射」です。

だからこそ、人の成長は「反射力」を鍛えるという一点に集約されます。そのためには、よい経験をすることです。たとえば、骨董品の鑑定士は、実物を見ただけで、本物か偽物か、また本物だったらどれほど芸術的価値があるかを、瞬時に見分けることができます。

ほとんど反射。真贋(しんがん)を見極める力は、経験がものを言います。どれほどたくさん
の品を見たことがあるのか、どれほどすばらしい逸品に出会ってきたか
素晴らしい経験はか
けがえのない財産となり、適切な反射として実を結びます

センスや直感などもすべて経験の賜物なのです。逆に、悪い反射癖が身につくと、なかなか戻すのが難しいです。

要するに、「ボタンを押す」ための準備を、まず脳が始め、その後しばらくして「押したい」という
感情が後付けで生まれます
押したくなったときには、もう脳の中で「押す準備」が整っています
となれば、私たちの「自由意思」とはいったい何なのでしょう?

モニター上で計算問題を解いてもらうテストから、さらに面白い側面が見えてきます。この実験では、ときおり答えがモニターに一瞬見えてしまうプログラムを仕込んでおきます。すると自由意思があると信じているうちでは、答えが見えてしまっても見なかったことにして解答する傾向があったのに対し、「心に自由意思はない」という決定論の考え方を教えてからは、見えた答えをカンニングして答える傾向が強まりました

この結果は、「自由意思を否定されると、思い通りに行動することへの究極の弁明が立つのではないか」と思われますより素直になるということでしょう。しかし、現在の社会、とりわけ法律のシステムは、ヒトに自由な心があることを前提として作られているので、大きな問題です。

身体をそれにふさわしい状況に置くから「眠くなる」わけです身体が先で眠気は後なのです就寝の姿勢(出力=行動)を作ることで、それに見合った内面(感情や感覚)が形成されます

ときに会議中や授業中に眠くなるのも、静かに座っている姿勢が休息の姿勢でもあるからだといえます。あくまでも身体がトリガー(引き金)です笑顔を作ることによって、そのうちに楽しくなるのも、同じことです

さらに「やる気」も同じですやる気が出たからやるというより、やり始めるとやる気が出るケースが多いです。年末の大掃除などはよい例で、乗り気がしないまま始めたかもしれませんが、いざ作業を開始すると、次第に気分が乗ってきて、部屋をすっかりきれいにしてしまった経験はないでしょうか?

 

著者の最新作が出るようなのでお知らせします。

 

 

自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80

です。著者の本はハズレが非常に少ないので、楽しみです。


以上。

いつも応援ありがとうございます!