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書評 「臆病者のための裁判入門」





最初から142ページまでは割愛します。著者の裁判体験記の部分です。この部分は、
本書を読んでお楽しみあれ。それ以降のページの書評を書きますね。

民事紛争に巻き込まれたら、いったいどうすればいいのでしょうか?

著者の体験をもとに効率的な紛争解決手段について書きます。

最初に断っておきますがここで扱うのは少額で定型化できない民事の紛争です

多額の金銭がからむなら、最初から弁護士を立てて交渉をした方いいです。

定型化できる事件というのは、交通事故や消費者金融の過払い金銭請求のように膨大な先行事例があるもので、少額の紛争でも効率的に解決するためのルールができあがっています。

著書が巻き込まれたのは、「少額で定型化できない」典型的な民事紛争です。
損保会社の担当者が無断で事故を自損自弁で処理してしまい、そのうえ虚偽
の話をでっちあげて保険金請求をあきらめさせようとしていた、などということ
はふつうはあり得ません。

民間団体が行う裁判外の紛争解決手続きには、法律上は調停(斡旋)と仲裁のふたつ

しかないはずですが、日本では金融機関のADR(金融ADR)などで、その中間ともいえる

「片面的義務」が広く導入されています。交通事故紛争処理センターの「審理」もそのひとつです。

調停が不成立になると、紛争は裁判に移行することになります

ですが、調停(ADR)の大半が本人申立てであることを考えれば、弁護士を立てて裁判する
ことも、本人訴訟を行なうこともきわめてハードルが高いことは間違いありません。


紛争が個人(消費者)と金融機関の間で起きた場合、当事者間の「格差」はよ
り大きな問題になります。金融機関にとって裁判は日常業務のひとつですから、
ほとんど負担にはなりません
。このような状況で調停案を自由に断ること
ができるとするならば、金融機関はすべての調停案を不同意にして、申立人
を「泣き寝入り」させようとするかもしれません。これではせっかくのADRも役に
立たず、利用者から見放されてしまいます。

この問題を解決するもっとも効果的な方法は、「特別調停案」を提示する権限
ADR期間に与え、個人は調停案を断ることができますが、金融機関は原則とし
て調停案を受け入れなくてはならないとすることです

これが、金融ADRにおける「片面的義務」」と呼ばれるもので、金融機関は手続応諾義務、資料提出義務とともに特別調停案の受諾義務を負っています。

ここであらためて、少額の民事紛争を解決する3つの司法制度の特徴を
まとめておきます


1 民事調停
法律的な主張を厳密にしなくても申立てが可能。調停委員を間にはさんで、
相手との合意点を探ることができます。和解案を文書化した「調停調書」は判決

と同様の効力を持ちますが、相手が調停に出ないか、調停案を断れば不成立となります。

2 少額訴訟
60万円以下の少額の民事紛争に対応する制度で、本人訴訟が前提です。原告・
被告の双方が口頭弁論で対峙し、必要であれば当事者尋問や証人尋問を行
ないます。原則として審理は1回で終わり、その場で判決が言い渡されます。

3 簡易裁判
140万円以下の訴訟を扱いますが、審理の仕方は地方裁判所の通常裁判と同じです。


では次に、訴える立場になって少額の民事紛争を考えてみましょう


知人に貸したお金を返してもらえないというトラブルで、相手に返済の意思がある
ものの、分割払いの回数など返済方法で折り合いがつかないような場合は、わざ
わざ裁判をするまでもないので民事調停が適しています。

逆にいえば、話し合いの余地がない場合は民事調停はほとんど役に立ちません

相手に返済する気がなければ、そもそも調停の場に出てこないでしょう。

通常、2回の期日に相手が呼び出しに応じなければ調停は不成立になりますが、それ
でも申立人は調停に出席しなければならないのだから、たんに時間の無駄です。

また、相手が事実そのものを争っている場合も調停は機能しません。貸借の契約書がなく、
相手が「そのお金は借りたのではなくもらったのだ」と主張した場合、調停委員はど
ちらの主張が事実かを判断することができないので、調停はそのまま不成立となります。

少額訴訟は、契約書などで相手の過失(家賃の不払いなど)がはっきりしていて、
手早く判決がほしい場合に適しています

相手に話し合う気も支払う意思もないような場合でも有効で、被告が抗弁しなければ(法廷に出席して自分の主張をしなければ)原告の主張がそのまま認められ、判決を取れば強制執行の申立てができます。

相手に支払う意思がある場合は、裁判官の勧めで和解協議となり、弁済方法などで合意すれ

ば和解調停がつくられます。これは、民事調停における和解と同じです。


実際の少額訴訟では、訴えられた側が出席せず、被告欠席のままの場で判決になる
ことが大半です。その一方で、被告が出てきて反論する場合は、法律の知識のない素人
が法廷で争うのですから、著者のような奇妙なやり取りが頻出することになります。

訴額が60万円を超え、なおかつ契約書などで事実を客観的に証明できるなら、本人訴訟で
簡易裁判(通常訴訟)に訴えてもいいのです
。ただし賠償請求額が100万円程度になれば、
弁護士を代理人とすることも可能です。

それでは、訴えられる側はどうでしょうか


インターネット上でよく見かけるのが、ネットオークションの出品者と落札者の間で、
「商品の説明と実物が違う」などの理由でトラブルになったケースです。

このとき相手の損害額が些少なら、費用の安い民事調停を申し立ててくる可能性があります

民事調停の出頭要請は裁判所から書留で送られてくるので、はじめての人には相当な

威圧感があります。ですが、これは話し合いの勧めなので、それほど深刻にとらえる必要

はありません。民事調停は誰でも申し立てることができ、裁判所は話し合いのために相手方
に出頭を要請するのであって、調停委員会が申立人の主張を認めたわけではないか
らです。

申立人の主張を検討して、話し合いで和解の余地があると思えば調停の場に出ます
そうでなければ、時間の無駄なので裁判所の出頭要請に従わないこともできます。あなた
が調停の場に出なければ、自動的に調停は不成立となり、相手は賠償請求をあき
らめるか、訴訟に訴えることになります

仮に訴訟になっても、民事調停の場に出なかったことは裁判所の判断には影響しないでしょうが、相手は当然ながら、そのことを「不誠実」と非難するでしょう。その場合は、裁判所宛に書面で反論を書き、「本件については話し合いの余地はない」と述べておけばいいのです。

調停期日前に被申立人が和解に応じるつもりがないことを示せば、最初の期日で調停は不成立となります。

次いで少額訴訟ですが、あなたがもし少額訴訟の被告となったら、判決で勝
つことはほぼ不可能だと考えた方がいいです

2011年の統計では、判決に至った5636件の少額訴訟のうち、原告の訴えが却下されたのは14件、棄却されたものは314件しかありません。

じつに訴えの94%で、原告の主張を認める判決が出ています

 

このように、民事調停、少額訴訟、簡易裁判は、裁判所の実務でほぼ同一の
領域の民事紛争を扱うものだと考えられています
。民事調停で不成立になった事
件は地裁に訴えるのが当然であり、それを少額訴訟や簡易裁判に提訴しようとした
著者たちが門前払いされたのは、ある意味当然でした。

考えてみれば、民事訴訟というのは、身に覚えのない被告にとってはきわめて
理不尽な制度です

刑事裁判では、犯罪を捜査した警察が容疑者を逮捕し、さらに検察官が取り調べて、刑事罰を科すのが相当と判断したケースだけが裁判にかけられます。それだけ慎重にやっても冤罪事件が防げないのに、民事訴訟では裁判を起こすのは国民の権利で、誰でも好きな相手を訴えることができます。

それがいいがかりや嫌がらせのようなものであっても、最低限の法的要件さえ満たしていれば、

訴えられた側は被告として法廷に強制的に呼び出され、反論(抗弁)しなくてはなりません。

これは被告にとって大きな負担なので、民事訴訟では原告の訴えをきびしく審理し、
事実関係の厳密な証明を求めています。(これを原告の「挙証責任」といいます)

民事訴訟では、被告は原告が主張したことだけに反論すればいいのです原告が
事実を立証できなければ、それだけで被告は裁判に勝つことができます

事実認定を争う民事訴訟は、もともと原告に不利、被告に有利な仕組みになっています。

それに対して名誉棄損は、プライバシーを侵害し社会的評価を貶めるような虚偽の
報道をされたという訴えだから、挙証責任は報道したメディア側にあります
。名誉
棄損で訴えられたメディア・執筆者は、公益に資することを目的として、じゅうぶん
な取材のもとに、真実であると信ずるに足る理由をもって報道したことを証明しなく
てはなりません。原告は、被告(メディア)の主張に個別に反論していけばいいだけだ
から、一般の民事訴訟とは攻守が逆転しています。これが、三浦和義(ロス疑惑
事件の人)が拘置所にいながらにして本人訴訟で連戦連勝できた理由です。

名誉棄損の訴訟では、原告は証拠を集めて事実を立証する必要は(原則と
して)なく、メディア側の主張の矛盾点を突くだけでいいのです
。(誤解のないよう
にいっておくと、これは名誉棄損の裁判がやり得ということではありません。原告は虚偽
の報道をされた時点で社会的な評価が大きく失墜しており、裁判を有利に進める
ことができたとしても実質的な名誉の回復が可能なわけではないからです)

日本では零細なアパートの大家よりも、家賃を払わない、貧しいひとたちの
権利が強く保護されているので、家賃を6か月以上滞納していないと強制執行
の判決は出ないし、弁護士費用を払ってようやく判決を得ても、運送代と倉庫代
を払わないと強制執行ができません。

そのうえ部屋がゴミ屋敷状態になっていると、修復のために多額のリフォーム代がかかります。一時期「サラリーマン大家」が流行りましたが、日本の司法制度では、素人の不動産経営には大きなリスクが隠されています


最後に、著者の体験記の一部を載せますね。

裁判所はすべての損保会社に対して、「保険契約者や事故の被害者に嘘をつい
て保険金を請求できなくさせても、謝罪して保険金を支払えばそれ以上のペナル
ティはいっさいない」というお墨付きを与えたことになります。それでほんとうにいいのか、
東京地裁。と書かれていました。

 

私も身近に似たような事例を経験したことがあります親が住宅を買ったのですが、
過剰請求されていたのです
。親が見抜いて、担当者に説明を求めましたが、担当者は
そんなことはありませんの一点張り。結局、親の計算が正しくて、担当者は謝りに
きて、土産物を置いていきました。

この事例は、基本的に過剰請求するのはやり得だということです。客がスルーすれば、住宅会社は丸儲けですばれても、謝罪と土産物で済まします。こんなことでいいのでしょうか。

その住宅メーカーの名前を晒したいくらいです。
著者も損保会社を実名にしてませんが、こういう会社は実名を晒せばいいと思いますね。

そうしないと抑止力が働きません。皆さんも、過剰請求には気をつけるようにしましょうね。

ちなみに、コンビニのお釣りでも、応用できそうです。あまり確認しないで、お釣りを毎回受け
取る顧客がいたら、わざと少なく渡せばいいのです。そして、ばれた場合は、すいませんと
謝ります。これでやり得です。


以上。

いつも応援ありがとうございます!