書評 「ビッグデータの正体」




私がこの本に副題をつけるとしたら、「直感も、論理的思考力も不要な時代」です。


人間は理由付けが好きです。しかし、現実は、人間は日常生活において、ほとんど直感的
判断で動いています
スモールデータ時代は、因果関係を重視していました。ですが、ビッグデータ時代においては、因果関係を軽視するようになりました。

因果関係より、相関関係を重視するのです。ある結果が出たとして、相関関係が判明すれば、
原因なんてどうでもいいわけです。人間は、日常生活においては、理由なく行動することが
多いです。さらに、世の中は複雑系です。理由・原因なんて、たくさんあります。

人間が根拠を持って、説明できることなんて限度があるのです。ならば、相関分析で答えが出
ればいいのではないでしょうか
相関分析で答えが出れば、理由なんてどうでもいいのです。もちろん、それでも、人間は、原因を探りたがる生き物ですが

例えば、こういう例があります。相関分析の結果、「オレンジ色に塗装されたクルマは欠陥が大幅
に少ない」
ことがわかりました。他の車の平均値の半分ほどだったのです。

ここまで読むと、その理由が気になり始めます。原因となりそうな仮説はいくらでも浮かびます。
ところが、物事を解明しようとすると、かえって焦点がぼやけます。確かに、相関関係はある
し、数学的に示すこともできます。

しかし、因果関係となると、そう簡単にはいきません。だから、相関関係の裏側にある理由を
説明しようとしない方が賢明なのです
。馬鹿げた話、車の所有者はオレンジ色に塗っておくと、
いいことがあるかもしれません。

こうした事実を考えると、信頼できるデータを基にした相関分析を始め、因果関係に依存しな
い手法は、直感的思考でひねり出した因果関係よりも基本的に優れています
。しかも、文脈が
増えてくると、じっくりと時間をかけて因果関係を探る論理的思考よりも、相関分析のほうが
さらに使い勝手や効率が高まります。

さらに、相関分析で、答えを出してから、因果関係を探ること可能でしょう。やみくもに探るより、
よほど効率がいいのです。

ここで、ビッグデータをどのように活かせるのか?の例を書きます。

▲人間の臀部(でんぶ)、つまり尻の形状を分析し、数値化し、データ化することで、座り方自体
が情報になるといいます。この技術は、自動車の盗難防止システムとして開発されています。

登録ドライバー以外が運転席に座ると、パスワードを求められ、失敗するとエンジンがかかりません。この技術の応用分野は、ドライバーがウトウトして前かがみになると、警報を鳴らしたり、自動的にブレーキをかけたりすることです。

しかも、自動車の盗難防止だけでなく、乗り逃げした容疑者を指紋同様に臀部から特定するこ
とも可能かもしれません


▲グーグルはOCR(光学文字認識)ソフトでデジタル画像にある文字や単語、文、段落を認識させました。この結果、単なるデジタル画像ではなく、個々の文字が絵ではなく文字としてデータ化されました。

この作業によって、アルゴリズム解析が可能になり、文章の索引作成と検索も実現しました。言葉をデータ化すると、数えきれないほどの用途が生まれます。グーグルは、この技術を、機械翻訳サービスの品質向上に役立てています。

グーグルのシステムは、翻訳書を自動的に選び出し、翻訳者がある言葉から別の言語への翻訳
時に使用する単語やフレーズを分析しています。これを突き詰めれば、翻訳は大掛かりな数学の
問題
として扱えます。一方の言語のある言葉に対して、別の言葉ではどの言葉が最適な置き換えになるのか確率として計算できるわけです。

アマゾンは、アルゴリズム「統計的に有意な語句」を拾い、テーマ上のつながりがある本を見つけ出すサービスがありますが、それ以外には膨大な語句をビッグデータ分析に活用していません。書籍内の利用に関して、保守的な出版業界から制約条件を付きつけられているのでしょう

ビッグデータ時代の問題点。
プライバシーの問題があります。次に、ビッグデータを駆使すれば、まだ犯罪を犯してもないのに、「この人は犯罪を犯す予定がある」と分析され、犯罪前に逮捕されてしまう可能性があります。

また、クズな情報からはクズなデータ分析結果しか出ません。例として、ベトナム戦争があります。上官に対し、嘘の戦死者数を報告していたのですその戦死者数のデータを基に、戦況は
良いのではないか?
とアメリカ幹部は判断していました。

さらに、データ分析からは思いつかない発想があります。スティーブジョブズは、iPad発売に当たって市場調査は一切実施していないとインタビューで説明しています。他にも、発明のひらめきは
データ分析からは出てきません
。自動車王ヘンリー・フォードには「車がない時代に「欲しいもの
は何か」と人々に尋ねたら「もっと速い馬が欲しい」と答えただろう」
という有名な発言があります。

翻訳書だけど、訳がこなれていて非常に読みやすいでえす。お勧めです。


以上。

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